社会保障審議会が22日に開いた介護保険部会では、介護保険サービス利用者の負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直しについて早期に議論を始めるよう複数の委員が要望した。また、検討に役立つ客観的な資料の提示を厚生労働省に求める意見も出た。
「一定以上所得」の判断基準については、武見敬三厚労相と鈴木俊一財務相が20日に行った予算折衝で見直しを先送りすることで合意。介護サービスは医療サービスと利用実態が異なることなどを考慮しながら総合的に検討を行い、10期目の介護保険事業計画が始まる2027年度の前までに結論を出すこととなった。
厚労省は22日の部会でこうした経緯などを報告し、議論を促した。
伊藤悦郎委員(健康保険組合連合会常務理事)は、基準見直しが先送りされたことについて「極めて遺憾だ」とした上で、できるだけ早急に議論を開始して結論を出すよう強く要望した。また、2割負担だけではなく、3割負担の判断基準の見直しやケアマネジメントに関する給付の在り方なども併せて検討すべきだとした。
井上隆委員(経団連専務理事)も「今回先送りされたことは非常に残念だ」とし、早急に検討を開始するよう求めた。このほか「客観的な議論に資するデータなどを用意してほしい」との意見や、「現役世代の負担軽減のために、より踏み込んだ給付と負担の見直しが不可欠だ」といった指摘もあった。
判断基準の見直しに当たり、厚労省は2つの案を軸に検討する。1つ目の案は、直近の被保険者の所得などに応じた分布を踏まえ、一定の負担上限額を設けなくても負担増に対応できると考えられる所得のある利用者に限って2割負担の対象とする。2つ目の案では、当面の間は一定の負担上限額を設けた上で、1つ目の案よりも広い範囲の利用者を2割負担の対象とする。その上で、介護サービス利用者などへの影響を分析した上で、負担上限額の在り方について28年度までに必要な見直しを行う。
厚労省では、介護保険での負担への金融資産の保有状況などの反映や、きめ細かい負担割合の在り方と併せて早急に検討を開始する方針。
厚生労働省 webサイト資料 参照