費用負担の変更にかかるリスク拡大

厚労省より「介護保険制度の費用負担の見直しに関する介護支援専門員へのご協力のお願いについて」と題した通知が出されました(厚労省通知vol.485)。同じものは、日本介護支援専門員協会へも送付されています。あくまで「依頼」としていますが、利用者の費用負担の変更にかかわるという点で重要性は高いといえます。

ケアマネの申請補助・代行を想定した場合
周知のとおり、今年8月から一定以上所得者の費用負担にかかるしくみが3つ変更になります。(1)サービスの自己負担が2割に、(2)高額介護サービス費の負担限度額見直し、そして、(3)特定入所者介護サービス費(補足給付)の支給要件が見直されることです。

これらの費用負担の変更に際し、利用者からの相談に乗るなどのサポートを求めているのが今回の通知です。特に(2)(3)については、申請手続きに際し、どこまで補助・代行が可能なのかが問題となりそうです。これまでと異なり、個人の資産状況の確認機会やそれを証明する書類添付が増え、個人情報の取り扱いについてのトラブルが懸念されるからです。

地域のケアマネ連絡会によっては、こうした申請の補助・代行の取り扱いについて、フローチャートの作成などを行なっています。ある連絡会では、本人が窓口に行けないなどの事情がある場合、(郵送申請が可能であることを確認しつつ)ケアマネが申請代行することは可能としたうえで、それでも「行政の介護保険担当窓口への相談」を行なうことを前提としています。いずれにしても、これまでの個人情報の取り扱い以上に慎重を期さなければならないゆえに、保険者との密接な連携が欠かせなくなると言えるでしょう。


果たして「現場へのお願い」で十分なのか
そもそも、年金情報の流出などが社会問題となり、特に資産等にかかわる個人情報の取り扱いは、国としても抜本改革が必要な課題となっているはずです。今回のように「現場に対するお願い」という通知だけで運営しようとする点に問題意識の低さがうかがえます。

もちろん、厚労省も平成16年に「医療・介護事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」を示しています。しかし、すでに10年以上経過する中で、社会状況は大きく変わり、個人情報を巧みに悪用する手法などは止まるところを知りません。

個人の資産状況等の把握を今まで以上に進めるのであれば、個人情報の取り扱いや事故発生時のセーフティネットについて、国の責任でしくみを整え直すことが必要でしょう。本来であれば、ケアマネの運営基準の改定さえも必要なところを「お願い」で済ますという姿勢を見ていると、いずれ大きなトラブルが生じるであろうことは容易に想像できます。

今後もますます問題になる個人情報取り扱い
気になるのは、国が今後も「高齢者等の負担能力に応じた制度変更」を進めることを示唆している点です。この傾向が進めば進むほど、資産等にかかる個人情報の中身は密度を増していきます。国は、いずれはマイナンバーで管理を一元化したいのでしょうが、年金情報流出問題などで進ちょくが滞る中、ケアマネなどの支援者がしわ寄せを受けるというケースはしばらく続くことになりかねません。

今回のさまざまな制度改正により、現場のケアマネの業務負担は急激に増えています。その中で、手にする個人情報の中身が質・量ともに増えていくとなれば、どんなにケアマネ側が気を配っていても流出リスクは拡大することになるでしょう。もはや「ケアマネ個人の管理能力」の問題ではなく、国のリスクマネジメントの問題になっているわけです。

個人的には、ケアマネが利用者の多様な相談によるパートナーシップを築くこと自体はやぶさかではありません。しかし、そのためには、制度改正によってケアマネの地位と権利の保全を強化し、それに見合った報酬体系や身分保障を図ることが前提と考えています。ケアマネは、決して「制度の狭間で便利に動いてくれる存在ではない」ことを、国としてもう一度考え直してもらいたいものです。


介護保険最新情報(厚生労働省)Vol.485