ニッポンの死角 「お泊まりデイ」サービスについて取材しました。

フジテレビ系(FNN) 5月6日(水)13時38分配信を転用

高齢者が、日帰りで介護を受ける「デイサービス」。そこに、夜も宿泊する「お泊まりデイ」と呼ばれるサービスが、近年拡大しています。しかし、ニーズが高まる一方で、規制をかける動きもあり、一部の利用者に困惑が広がっています。

茨城・北茨城市にあるデイサービスの施設「樹楽団らんの家・大津」。
毎日、10人の高齢者が、食事や入浴などの介護を受けている。
午後5時にデイサービスは終了するが、帰宅したのは、わずか3人だった。
残った7人は、「お泊まりデイ」と呼ばれるサービスを利用し、このまま宿泊する。
このうち6人が、「老老介護」などの理由から、1年以上にわたり、ここで寝泊まりを続ける長期連泊者だった。
「お泊まりデイ」は、特別養護老人ホームの空きを待つ人の「受け皿」として、ニーズが高まっている。
しかし、こうした「お泊まりデイ」をめぐり、今、ある問題が指摘されている。
それは、夜間の運営にあった。
午後7時半、日中はリビングとして使われていた場所に、宿泊者分の簡易ベッドが設置される。
男女の間の仕切りは、このカーテン1枚。
実は、「お泊まりデイ」は、介護保険が適用されないため、国の規制がなく、夜間の運営は、事業者の裁量に任されている。
実際、この施設では、パーティションで、1人1人のプライバシーの確保に努めているが、中には、こうした配慮がない劣悪な環境に、高齢者を泊める施設もあり、問題となっている。
そこで厚生労働省は、4月30日、「お泊まりデイ」に関するガイドラインを発表。
夜間の定員や、職員の人員配置のほか、男女を同じ部屋に宿泊させないことなどが明記された。
さらに連泊については、「緊急時、または短期の利用に限る」として、長期連泊に一定の歯止めをかける方針を打ち出した。
しかし、施設や利用者は戸惑いを見せている。
1年5カ月にわたり、ここに連泊する熊坂 みささん(92)。
以前、幻覚や徘徊(はいかい)の症状がひどく、受け入れ先を求め、家族がたどり着いたのが、この施設だった。
熊坂さんの娘・堀野京子さんは「みんなに介護してもらって、ここまでになった。ここに来て笑顔が見られて、あぁ良かったんだなって」と話した。
ここで介護を受け、症状が改善したことから、家族は今後も、熊坂さんを預けたいと考えている。
しかし、今回のガイドラインでは、こうした家族の声が置き去りになる可能性もある。
樹楽団らんの家・大津代表の青木仁子さんは「ガイドラインが出たら、もちろん順守しなければならないですし、本当にやりにくい環境になってくると思うんですけど、わたしは、ここを辞めたくないですし、ここの利用者さんも手放したくないので...」と話した。
「お泊まりデイ」をめぐる、介護の現場と行政の認識のずれ。
「理想の介護」とは何なのか、今後も議論が続くとみられる